今まで3ドアのジムニーシエラ(以下、シエラ)しか選択肢がなかった市場に、新たに5ドアのジムニーノマド(以下、ノマド)が登場したことで、ジムニーシリーズに新たな選択肢が加わりました。
今回はノマドとシエラでどのような違いがあるのか比較し、それぞれどのようなニーズに合うのか解説していきます。
すぐわかる外観の違い
歴代のジムニーの中で初めて生まれた5ドアのノマドは、2018年の現行型ジムニーのデビュー当時からずっと期待されていました。
外観は明らかな違いがありますが、どれぐらいのサイズ感なのかイメージしづらいかもしれません。実際に車種を例に上げて比較するほか、細かな部分の違いについても解説します。
ノマドはどれぐらい大きい?
ノマドがもっとも変わった部分は何よりも「長さ」です。全長は340mm長く(3890mm)、ホイールベースも同様に340mm長く(2590mm)なりました。
いわゆるコンパクトカーと同等の大きさとなり、実際にトヨタ ヤリスを例に挙げてみます。
ジムニーシエラ | ジムニーノマド | ヤリス | |
全長 | 3550mm | 3890(+340)mm | 3950mm |
全幅 | 1645mm | 1695mm | |
全高 | 1730mm | 1725(-5)mm | 1495mm |
ホイールベース | 2250mm | 2590(+340)mm | 2550mm |
トヨタ ヤリスなどのコンパクトカーと同等サイズ
細かな変更点もある
「ただ伸ばしただけに見せたかったのです」
参照:【スズキ ジムニーノマド 発表】シエラとはこんなにも違う!「ファミリー最上級モデルならではのデザイン」とは | クルマ情報サイトーGAZOO.com
これはノマド開発陣の松島氏による言葉です。
たしかに外観で長さ以外に関する部分に大きな違いは見られませんが、細かな部分の変更としてあるのはドアハンドルの位置変更です。
リアのオーバーフェンダーの位置に合わせるためにシエラよりもわずかながら高い位置に移動しており、少しだけボディ外側にせり出しています。そして、手を潜り込ませる凹み部分の深さを浅くしているのも小さな変更点です。
もっとも違う室内
室内スペースが拡大されたノマドは大きなセールスポイントとなります。快適性は言うまでもなくノマドに軍配が上がりますが、シエラとの細かな部分の違いを紹介します。
肝心の後部座席はどう?
3ドアのジムニーは4人乗りですが、後部座席へのアクセスやスペース的な問題から「2人しか乗せることを考えてない」ユーザーも多く、後部座席を撤去してしまうケースもあるほどです。
5ドアのノマドはなんといっても後部座席へアクセスするためのドアが追加され、この時点で乗降性は格段に違います。ノマドの後部座席のスペースに関しても3ドアのシエラに比べて広くなっています。
- 後席ヒップポイントを50mm後方に移動(前列のシートとのスペースが広がり膝周辺に余裕が生まれた)
- シートの後席の乗員間距離が90mm拡大(横方向のスペースに余裕が生まれた)
そのほかの細かな部分では、後席ヒップポイントが20mm高くなり、シートクッション厚を確保するなど、快適な後部座席に生まれ変わっています。
ジムニーノマドの室内
意外な後部座席の仕様変更
5ドアにより後方にスペースが生まれたノマドですが、少し残念なことがあります。それは後部座席がフルフラットにならないことです。シエラは後部座席を前方に倒すと、ラゲッジスペースと同じ高さでフルフラットになります(下画像)。
また、シエラは後部座席の背面が樹脂化され、汚れた場合でも拭き取ることができるようになっており、アウトドアユースを想定した設計がされています(防汚タイプラゲッジフロア)。
防汚タイプラゲッジフロアを採用しフルフラットが可能なジムニーシエラ
ノマドが同じ仕様にされなかった理由はシートに厚みを持たせたことと、荷物の滑りにくさを考えてカーペットを採用したためです。
用途次第ではノマドのシートアレンジが使いづらい可能性も考えられます。例えば車中泊することを考えた場合に、室内の前から後ろまでフルフラットにしやすいのはノマドよりもシエラなのは明らかです。
荷室容量に関してはノマドに軍配が上がることは間違いありませんが、室内の大きさだけでなく、どのような用途で使うのかも考えた方が良いかもしれません。
後席シートを倒してもフルフラットにならないジムニーノマド
エンジンや構造はどう違う?
ノマドとシエラはエンジンや構造部分に違いはあるのでしょうか?外からは見えない部分ではありますが、両車の違いを知ってもらいたいと思います。
エンジンとギア比がまったく同じ
ノマドとシエラのどちらも同じエンジン(K15B)が搭載されており、出力スペックも全く同じです。さらにはギア比までもAT車、MT車ともに共通です。
ここで懸念するのはノマドはシエラよりもちょうど100kg重たいところでしょう。実際に燃費はシエラよりも0.7km/lダウン(13.6km/l)となっていることからも、「ノマドの方が遅い」ことは容易に想像できます。
見えない変更点
「それなら全部シエラと共通?」と思ってしまうかもしれませんが、そうではありません。
見えない部分でノマドは様々な点に変更が加えられています。
- フロントブレーキの改良(ベンチレーテッドディスク化)
- ATミッションの強化
- リアプロペラシャフトの強化(延長+大径化)
- ラダーフレーム強化(Xメンバー等の追加)
- サスペンション変更(スプリング&ショックアブソーバー&スタビライザー)
- フロントハブ周辺の強化(ハブベアリング&ドライブシャフト等)
走行性能の違い
全長が340mm長くなったことでノマドとシエラの乗りやすさにはどのような違いがあるのか興味深いところかもしれません。
そして、ジムニーシリーズの重要なポイントである4WD車としてのオフロード性能についても両車にはどのような違いが生まれているのか知ってもらいたいと思います。
乗り心地と乗りやすさは比例しない
ノマドはシエラに比べてホイールベースが340mm長くなったことで、前後ピッチが緩やかになり乗り心地に関してはノマドの方が優れていると判断できます。
ただし、ホイールベースのロング化の副作用ともいえるのが取り回しの悪さです。もともとジムニーは構造上、小回りが得意ではありませんが、ノマドの最小回転半径は5.7mとなります。
これはアルファードの最小回転半径(5.6m)とほぼ変わらない数値となり、市街地や駐車時などは乗りにくさを感じる場面があるでしょう。
ジムニーノマドはアルファードの最小回転半径(5.6m)とほぼ変わらない
ノマドのAT車だけに加わる運転支援機能
まずノマドとシエラの運転支援機能の違いとしてはブレーキサポート機能です。フロントガラス上部中央に備わるセンサーに変更が加えられました。
- シエラ:単眼カメラ&レーダーレーザー方式
- ノマド:ステレオカメラ方式(より早い段階で危険を察知することが可能。夜間の歩行者も検知することができる)
さらにノマドのAT車には、アダプティブクルーズコントロールが採用され、高速道路で先行車に追従しながら巡航することが可能となっています。そして、同じくノマドの4AT車には後退時の運転支援機能が追加され、誤発進抑制とブレーキサポートが採用されています。
ジムニーノマド AT車に採用されるアダプティブクルーズコントロール(ACC)
4WD車としてのポテンシャル
ノマドとシエラはエンジン、ミッション、トランスファーの主要な機関がすべて共通です。つまり、4WD車としてのオフロード性能を比較する場合に大きく影響する部分はホイールベースのみといっていいでしょう。
特に走破性に関しては、ホイールベースが長いノマドが不利になる場面が多くあります。高低差のある地形でいわゆる「亀の子状態」に陥ってしまいやすくなるからです。
シエラと同等の走破性を手に入れるためには、リフトアップやタイヤ大径化などのカスタムが必要となります。また、ノマドは重量が100kg重たくなっているため、動きが悪く、車体に負担が掛かることにもなります
価格とリセールバリュー
ジムニーシリーズにおいて最上級モデルと位置づけられるノマドですが、シエラと価格面を比較した場合にどのような部分が判断基準となるのでしょうか?さらに、気になるリセールバリューの点についても確かめてみます。
価格では悩まない?
価格面だけで考えると当然ながらシエラの方が有利です。同等グレードで比較してみると次のようになります。
シエラ | 218万3500円(JC、4AT) |
ノマド | 275万円(FC、4AT) |
価格差は約57万円です。しかし、両車は基本的構造は同じながらも、はっきりと趣向が異なるため、価格面でどちらにするか悩むこと珍しいケースかもしれません。
5ドアの利便性は3ドアでは得られない代わりに、3ドアのコンパクトなサイズ感は5ドアでは手に入れられません。もし、価格でノマドとシエラのどちらか迷っているなら、どんな目的で手に入れたいのか1度考え直してみることをおすすめします。
中古車市場でのリセールバリュー
発表から4日で受注ストップになるほど人気のノマドはしばらくの間、中古車市場が高騰すると予想されます。リセールバリューも同様に高値になると考えられます。
シエラについては2018年の登場以来ずっと中古車市場の高騰が続いてきましたが、ノマドの登場によって若干落ち着くと考えられます。ただし、今でもシエラとジムニー(軽自動車)には新車の納車待ちが多く、そこまで大きな値崩れはしないと予想することもできます。
ノマドとシエラのメリット・デメリット
両車のメリット・デメリットを確認して、どちらが自分に向いているのかチェックしてみてください。
ノマドのメリット・デメリット
メリット | 後席へのアクセスが容易になり、室内スペースも拡大されたことで、ファミリーカーやメインカーとしての使用できる。運転支援機能が追加。またホイールベースがロング化されたことで乗り心地の向上も確保できる。 |
デメリット | 最小回転半径の増大による取り回し悪さ。重量増にも関わらず、シエラとエンジンとギア比が全く同じ。燃費もダウン。後席とラゲッジルームがフルフラットにならない。ロングホイールベースによるオフロード走破性の悪化。 |
シエラのメリット・デメリット
メリット | コンパクトなボディサイズと取り回しやすさ。ショートホイールベースによるオフロード走破性の確保。後席とラゲッジルームがフルフラットになるシートアレンジ。 |
デメリット | 後席の乗降性と居住性の悪さ。ラゲッジルームが狭い。運転支援機能がノマドよりも少ない。 |
ちなみにライバル車は?
実質的にノマドとシエラにライバル車は不在といっても過言ではありません。
車格だけでいえばコンパクトSUVに分類されるので、ノマドならスズキ クロスビーやトヨタ ライズ。シエラならスズキ ハスラーやダイハツ タフトあたりをライバル車に仕立てることができます。
ただ、ジムニーシリーズすべてに採用される「ラダーフレーム」、「前後リジッドアクスル式サスペンション」と「副変速機付きパートタイム4WD」は世界的に見てもトヨタ ランクル70やジープ ラングラーなどの本格的な4WD車にしか装備されていない特殊ともいえる構造です。
同じ構造を持っているコンパクトSUVは皆無であることからもノマドとシエラは唯一無二のクルマといえます。
ランドクルーザー70
どっちが向いてる?
ノマドが登場するまでは、ジムニーといえば「普通車のジムニーシエラ」と「軽自動車のジムニー」の2車種でした。判断基準としては維持費やカスタム性を軸に決めることができました。しかし、ノマドとシエラでは異なる判断基準が必要です。
- ノマドに向いてる人
- ファミリーカーやメインカーとして1台で全部こなしたい人向け。3人~4人の乗車を頻繁にするなら絶対にノマド。荷物がたくさん積めて、キャンプからオフロードまで全部できる。
- シエラに向いてる人
- セカンドカーや遊びクルマとして趣味に全振りしたい人向け。本気でオフロード仕様に仕上げたいなら断然シエラ。コンパクトで取り回しが良く、1人~2人までの乗車と割り切って使える人に最適。
ノマドとシエラを比べてみると、どのような用途にそれぞれ向いているのか理解できたのではないでしょうか?意外と自分に最適なのはどちらなのか簡単に答えが出たかもしれません。基本的な部分は両車同じではありますが、「長さ」が違うことでハッキリとしたニーズの棲み分けができています。
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