ジムニーのオフロード走破性を向上させるための安全で確実な方法のひとつはウインチです。
メジャーなツールではあるもののオフローダーの中でもコアな層にしか使われないこともあって、選び方や基本的な注意点がいまいち不透明です。
そんなわけで今回はジムニーのウインチ選びで注意すべきポイントや車検のことについてをまとめてみました。
★2024年2月 「リアにもウインチ」追加
★2024年11月 一部更新
目次 |
ウインチの容量選定方法
ウインチ選びを始めるにあたってまず決めなければいけないのは容量(引っ張る力)です。
判断方法はポンド数(lb)を基準とします。
例えば4500lbの容量のウインチはkgに換算すると2045kg(約2トン)引っ張る力があることになります。
ウインチの選定では基本的に容量は大きければ大きいほど良いのですが、比例して電力の消費も大きく重量も重たくなるので用途に合わせた選び方が求められます。
万人向けのライトユース(4500lb~6000lb)
4500lb前後~6000lbまでの容量のウインチです。
コンパクトで重量も10kg程度なのでジムニーにはベストサイズといえます。
引っ張る力に関しては自車がスタックしたときの脱出程度なら問題ありません。ただ、ウインチだけの能力で脱出するには頼りない容量なので駆動を掛けて補助しながら巻き取るような使い方が良いでしょう。
深くハマってしまった場合など高負荷を掛ける場合には、ダブルラインで使用しウインチに負荷を掛けないようにすることが必要です。
難所向きハードユース(9000lb)
9000lb前後の大容量ウインチです。
ランクルなどのフルサイズ4WD車向けで大型で重量も30kg近くなり、ジムニーにはオーバースペックともいえるサイズになります。
スタックからの脱出はもちろんのこと、完全にハマった車のレスキューをしなければいけない場面で頼れる存在になるものの、フロントヘビーとなるためドライブシャフトが破損する確率も高くなります。
強力であるがゆえバッテリーの強化が必要になったり、ワイヤーの巻き方が悪い(乱巻き)とウインチ本体を壊してしまうぐらい強力です。
難所系クロカンでは圧倒的な安心感を与えてはくれますが、ここまでの容量になると付ける人を選ぶウインチといえるでしょう。
どのメーカーが良い?
容量の選定が決まったら次はどのメーカーにするか決めなければいけません。
価格を重視するか、信頼性&ブランド製を重視するかのどちらかを選択することになると思います。
よく比較されるのは以下の2メーカーです。
WARN(ウォーン) アメリカ発のメーカー。超がついてもいいぐらいウインチの有名メーカーで機種も豊富でウインチの最先端をリードしている。価格が高い点さえ気にならなければ間違いないメーカー。 |
シーエルリンク Youtubeでおなじみの日本初のメーカー。WARNに比べるとウインチの機種は少ないが断然リーズナブルなことから装着率は高い。 |
純正ウインチは存在する?
本格クロカン4WD車と呼ばれるジムニーなら純正ウインチが存在するのでは?と考えられた方もいるかもしれません。
たしかにランクルなどの大型4WD車には純正ウインチを搭載していた車両もあったのでジムニーに搭載されていても何ら不思議なことはありません。
しかし残念ながらジムニーに純正ウインチは存在しません。もちろん新車のオプションにもウインチは存在しないので基本的に社外製ウインチを搭載することが一般的です。
ウインチ装備の基本的な知識
ジムニーのウインチを安全かつ効率的に活用するには、適切なマウント、リモコン、ワイヤーの選択が重要です。ジムニーに使用する場合、適合するマウントが少ないため、ワンオフ品の製作も検討する必要があります。
また、操作性向上には無線と有線リモコンの併用が効果的。ワイヤーは金属とファイバーの2種類があり、用途や状況に応じて選択が必要です。バッテリー強化やリアウインチの追加も考慮してみましょう。
ウインチマウントは頑丈に固定
高負荷が掛かるウインチにはそれに耐えられるマウント(土台)が必須です。
やわなマウントだと巻き取りの途中にウインチと分離してしまい大変危険で事故に繋がる恐れもあるので、頑丈なマウントにしておかなければなりません。
ジムニー用の既製品のウインチマウントは種類が少なく適合するウインチも限られているため、ウインチの種類によっては既製品マウントの加工やワンオフでウインチマウントを作るケースも珍しくありません。
リモコンは無線と有線
操作性を考えた時にリモコンは重要なポイントです。
断然、無線タイプが使いやすいものの受信機のトラブルによって使用できなくなることもあるため、有線リモコンと併用して使えると便利です。
また、有線リモコンしかないウインチであっても後付けで無線リモコン化することも可能なほか、WARN製ウインチの中にはハーネスキット(ハブワイヤレスレシーバー103940 – WARN公式)を装着することで、スマホとウインチをBluetooth接続して操作ができる機種もあります。
ワイヤーの長さと種類
ウインチは容量に比例してワイヤーの長さも長くなります。
機種によりますが、おおよそで4500lbクラスで約15m、9000lbクラスで40m弱といったところでしょうか。
ワイヤーは長いほうが使い勝手が良いので、容量の小さいウインチの場合は長さを稼ぐために細いワイヤーに巻き直す方法が取られることもあります。
種類に関していうと金属ワイヤーとファイバーロープの2種類に分類できます。どちらも一長一短。ハードユースには金属ワイヤーが好まれたり、扱いやすさ重視ならファイバーロープが優れています。以下に2種類の違いをまとめました。
金属ワイヤー
耐摩耗性が高く岩や木に擦れても破断のリスクが少ない。紫外線や熱による経年劣化しにくいことがメリット。
デメリットは重たさ。軽量で非力なジムニーにはネックとなり、フロント周りの重量増にも繋がる。破断してしまった際の危険性も高く、ワイヤーのささくれやねじれなど取り扱いには注意が必要。
ファイバーロープ
金属ワイヤー同等の耐荷重でも半分以下の重量に抑えられるところがメリット。もし破断してしまった際も軽量なため比較的安全。柔軟性も高く、結び目を作るロープワークでも活用できるため汎用性が高い。
デメリットとなるのは岩や木に擦れたときの耐摩耗性が劣る点。ウインチ発熱に対する耐熱性が劣る点。紫外線等によって経年劣化してしまう点がある。金属ワイヤーに比べるとこれらの影響によって切れやすく、ヘビーユースには向いていないとされている。しかしながら、種類によっては対策が取られているものもあり一概に決めつけることはできない。
ウインチに必要なツール類
よりウインチの効果を増幅させるために装備しておいたほうが良いものがあります。
ジムニーのわずかな収納力を考えるとどこまで装備するかは自身の用途と照らし合わせる必要がありますが、様々なツールとウインチを掛け合わせることで、脱出できるまでのスピードが早まったり、牽引時の負荷軽減に繋がったりします。
ただ、ツールを生かしきるためにはウインチを使用する現場で経験を重ねることが何よりも大切だということも覚えておきましょう。
以下はそのツールの一例です。
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どんな状況でも対応するためのウインチ運用法
ジムニーのウインチを運用するにあたって、長時間の使用やハードユースを考えた場合に通常の装備では車体側の故障を招いたり、ウインチ1つでは対応できない状況も考えられます。
どんな状況でも対応するためのジムニーのウインチ運用法について紹介していきます。
バッテリーの強化
短時間ウインチを動作させるだけであれば既存のバッテリーでも問題ありません。
しかし、安心してウインチを運用していくにあたってバッテリーの強化は必須メニューとなってきます。ハードユースではウインチの電力の消費が大きいためエンジンが止まってしまうこともあるからです。
対策としては放電を繰り返しても耐えられるディープサイクルバッテリーといわれるものに変更することで、電力の消費が大きいウインチにも耐えられるようにします。
また、容量の大きな9000lbぐらいのウインチは電力の消費が激しいことから、ツインバッテリー化を行い対策する事例もあります。
リアにもウインチを備える
ウインチはフロントにだけ装備されるイメージが強いですがリアにも装備することができます。
オフロードではフロントのウインチだけではどうにもならない状況が起こるため、前後に備えておくことであらゆる状況に対応できます。
車体の装着にあたってはスペース的な問題で車体に据え置くよりもポータブル式(脱着式)が主流です。
4×4エスポワールではヒッチメンバーに差し込めるウインチマウントを製作し、リアウインチを装備した事例があります(下画像)。
ウインチの注意点と使用方法
ウインチをジムニーに装着することで、車両の牽引や障害物の移動も可能になる便利なツールですが、正しい使い方と安全面の対策が必要です。
乱巻きや破断を防ぐために、ワイヤーの巻取時の注意や負荷管理、牽引方向の確認など、多くのポイントに配慮することが求められます。また、倒木の移動や災害時の応急措置にも応用できるため、あらゆる場面でウインチは活躍します。
注意ポイント箇条書き
ウインチは何かと注意しなければいけないことが多いツールです。
主に気を付けなければならないのは「乱巻き」「破断」「ウインチ本体の保護」「牽引時の車両の取り扱い」です。これらに関することを箇条書きでズラっと並べてみます。
- ウインチは基本的にヒューズなどの安全装置がないため過度な負荷や長時間動作はしない
- 熱を持ったりしていないか?巻取時のモーター音に変化がないか等に注意
- 巻取時はワイヤーと車体が一直線になることが理想。横から引く時は乱巻きに注意
- 駆動を掛けながら牽引する際(牽引される際も)はウインチの巻取速度に追いつかないようにする
- 牽引される方向とタイヤの向きは平行が原則
- 牽引される際はタイヤの向きを固定するためにハンドルロックを有効に使う
- ワイヤーを弛ませた状態から急激にテンションを掛けない
- 引っ張る方向が悪いと牽引されるクルマにも無理が掛かりタイヤのビード落ちや足回りが破損することもある
- フェアリード付近(ワイヤーの出入口)は手が巻き込まれる恐れがあるので作業厳禁
- ワイヤーを出し切った状態から牽引しない(3巻ほど残しておく)
- 牽引時には破断の恐れがあることからワイヤー周辺、牽引車両の真後ろには近づかない
- 牽引時にはワイヤー破断時の被害軽減のために毛布やマット等を被せておく
- 複数人での牽引作業は声掛けなど意思疎通を行う
ウインチの応用ワザ
クルマを引っ張ること以外にもウインチの用途はあります。
もっとも応用しやすい場面といえるのが林道などで出くわす倒木・落石の処理です。ジムニーサイズなら倒木を少し移動させるだけで通行できるような林道も多くあるので、走る場所次第ではこちらがメインとなることもあったりします。
転倒などによってボディがダメージを受けてしまったり、走行に支障が出てしまった車両に対して応急的に損傷部分を復旧させるために使う場合もあります。
その他、滅多に使うことはないでしょうが重量物を移動させる時にも活用することができるため、災害時のがれきの撤去などでも活躍します。
ウインチ装着車の車検について
ジムニーにウインチを装着することで気になるのが車検のことだと思います。そのまま車検に通るのか疑問に思う方が多いかもしれません。
あらかじめ伝えておきたいのは「ウインチを装着すること自体が違法改造にはならない」ことです。ウインチの車検に関してどういった基準があるのか?公的な機関による通達や販売メーカーによる見解も踏まえて紹介していきます。
車検は通る?
ウインチは車検に通ります。
これにはれっきとした理由があってウインチは指定部品に分類されているからです。
指定部品とは、自動車使用者の嗜好により、追加、変更等をする蓋然性が高く、安全の確保、公害の防止上支障がないものとされている自動車部品として、「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査等における取扱いについて(依命通達)」(平成7年11月16日付け運輸省自動車交通局長通達自技第234号・自整第262号)に規定されており、この部品をボルトや接着剤などで装着する場合は、自動車検査証の記載事項の変更手続を行わなくても良いとされています。
※指定部品のルールは継続車検でしか適用されず、新規車検では適用されない点に注意
一部ではウインチの装着において「車両全長から3cm以上はみ出す場合は構造変更が必要」などと書かれているところもありますが、正しくはありません。車両全長から3cm以内に収めなければいけないものは指定外部品を装着する場合です。
指定部品は車両の全長を超えて取り付けられていたとしても問題ありません(ルーフキャリアやグリルガードも指定部品に分類されている)。
固定方法に問題があったり保安基準に適合していなければ指摘される可能性はありますが、ウインチの装着自体が問題とされることはありません。
参考資料となるリンク先も載せておきますので確認してみて下さい。
●指定部品一覧(2ページ目 4行目)
参考:「自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)」の細部取扱いについて | 国土交通省【PDF】
●ウインチの合法性についての見解
参考:ジムニーにウインチを装着したら車検に適合するのか? | シーエルリンク
ウインチを装備してみよう!
メジャーなのにマイナーなウインチについて深く掘り下げてみました。ジムニーに乗っていなくても参考になるような内容もあったかもしれません。
ジムニーのウインチ選びは用途に応じた容量をまず選ぶことが大切です。何よりも重要なのは安全に使いこなすためには知識だけでなく経験を重ねることです。
4×4エスポワールではジムニーにウインチ装着のアドバイス&サポートができます。どの容量のウインチにするか悩まれていたり、マウント方法にお悩みの方はお気軽にご相談下さい!
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